不倫で相手に公正証書の作成を要求されているが作成義務はある?

示談書を公正証書にするように求められたが、応じないといけないか

といったご相談をいただくことは少なくありません。

不倫で慰謝料を請求された際に、相手方から「示談書を公正証書にする」ことを求められ、初めは困惑される方が多くいらっしゃるかと思います。

そのような場合、示談書を安易に公正証書にしてしまうと、後に支払えなくなったときに給料や預金などを差し押さえられる可能性などがあります。そのため、相手の要求に独断で応じるのは危険かもしれません。

以下にて、示談書を公正証書にすることへの対応方法などについて説明していきます。

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示談書と公正証書の違い

公文書か私文書か

そもそも、示談書と公正証書の違いの第一は、「公文書(国や地方の公共団体や公務員が職務で作成した文書)か、私文書(個人的な文書や私人の作成した文書)か」という点です。

原本が公証役場で保管される

公正証書と私人が作成した文書とでは、保管場所も異なります。一般の私人が作成した文書の場合、作成者などが自分で保管しなければなりません。一方、公正証書の場合には公証役場に原本が保管されているのです。

紛失や書き加えのリスクがない

公正証書の場合、原本が公証役場で保管されて本人には「謄本(とうほん)」や「正本(せいほん)」という写ししか交付されないため、紛失や変造のリスクがありません。また、原本が公証役場で保管されるので、本人が謄本や正本をなくしてもまた公証役場へ謄本を申請することができます。

一方、私人が作成した文書の場合、原本を紛失してしまったら写しの再発行はできません。また、原本が当事者の手元にあるため、物理的には書類に手を加えることが可能ではあり、紛失や変造のリスクがあります

強制執行認諾条項をつけられる

公正証書では「強制執行認諾条項」を付けることが多くあります。

制執行認諾条項とは

債務者が強制執行(差し押さえ)を受け入れる条項です。

金銭債務の債務者が強制執行を受け入れると、債務者が支払いをしないときに債権者はすぐに債務者の財産を差し押さえることが可能になります。

一方、私文書の場合、強制執行認諾条項をつけられません。債務者が支払いをしないとき、債権者はいったん訴訟を提起し、判決を経た上でなければ差し押さえができません。

このように、公正証書では強制執行認諾条項がつくことにより、強制執行が非常に簡単になるのです。

不倫の示談書を公正証書にする効果やリスク

不倫の示談書を公正証書にすると、どういった効果や問題が発生するのでしょうか?

相手方に対して果たさなければならない約束の内容を明確化し限定できるというのは、非常に重要な効果といえます。その約束を果たせたなら、相手方との不倫慰謝料問題は終わりになるからです。

もっとも、示談書作成にあたってきちんと内容を吟味しておかないと、約束の内容が限定されておらず、不倫慰謝料問題も最終的に解決されてはいない、ということになりかねません。

また、問題点として一番に挙げられるのは前述のとおり、支払いを滞納したときに給料や財産を差し押さえられる可能性が発生することです。

自分たちで作成した示談書があるだけなら、支払いをしなくてもすぐに財産を差し押さえられるということは考えにくいです。この場合、まずは相手から訴訟などを起こされて、裁判官による判決が下されるなどして、その内容が確定してから財産を差し押さえられることになります。ところが公正証書があると、支払いを滞納したらすぐに相手に財産を差し押さえられてしまうため、不利益が大きくなってしまいます。

示談書の公正証書化は断れる

不倫慰謝料の示談をするときには、請求者側は公正証書にするよう求めてくるケースが多々あります。ただ、公正証書化に応じなければならないわけではありません。

公正証書は、当事者双方が合意しないと作成できないため、一方当事者は公正証書化を断ることも可能です。滞納した場合のリスクを考えると、断れるのであれば公正証書は断った方が無難であるといえます。

示談書の公正証書化を断るリスク

不倫の示談をするときに公正証書を断ってもいいのか不安になることもあるかと思います。

仮に断った場合、相手がより高額な慰謝料を求めてくる場合や、分割払いを認めてもらえない場合、示談が決裂して訴訟を起こされる可能性もあるため、公正証書化に応じることも考えるかもしれません。

しかし、公正証書化に応じる場合でも、「この内容のまま公正証書を作って大丈夫なのか、不利過ぎるのではないか」などと悩まれることもあるかと思います。

そこで、公正証書化に応じる前に一度は弁護士に相談すべきです。

弁護士に依頼すれば、公正証書を作成するかどうかや慰謝料の金額、分割条件などについても相手方と交渉してくれることになりますし、相手方の言いなりの内容で示談を強いられることも無くなります。弁護士を間に入れた方が有利な内容で解決できる可能性も高まるでしょう。

弊社では不倫慰謝料関係のトラブル解決に力を入れて取り組んでいます。

慰謝料請求をされたときに相手から公正証書を求められて困ったときには、お早めにご相談ください。

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