相続における不当利得返還請求とは?時効や請求方法について解説

相続をめぐる紛争において、「不当利得返還請求」は重要な法的手段の一つです。

相続人の中には、生前に被相続人の財産を不当に取得していたり、相続開始後に無断で遺産を処分してしまったりする人がいることがあります。このようなケースにおいて、他の相続人が法的に取り得る手段として、不当利得返還請求があります。

本記事では、不当利得返還請求の請求要件や時効、請求の仕方などについて解説いたします。

目次

不当利得返還請求とは

不当利得返還請求とは、他人の財産や利益を法律上の原因なく取得した者に対し、その利益の返還を求める民法上の請求権です。相続の場面では、例えば一部の相続人が被相続人の預貯金を無断で引き出し、自己のために消費した場合などで行使されることが想定されます。

贈与契約哉遺言などの正当な権限がないにもかかわらず財産を受け取った者は、その利益を元の持ち主やその相続人に変換する義務を負います。

遺留分侵害額請求との違い

不当利得返還請求と似た場面で登場する制度に「遺留分侵害額請求」がありますが、これは全く別の法的制度です。

遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に法律上保障された、最低限の相続分を指します。

たとえば被相続人が、生前に特定の相続人に全財産を贈与していたり、特定の者に全てを遺贈していたりした場合、遺留分を侵害された相続人は「遺留分侵害額請求」をすることで、侵害された額に相当する金銭の支払いを求めることができます。

つまり、遺留分侵害額請求は、あくまで「遺留分の保障」に関する制度であるのに対し、不当利得返還請求はより広範に「不当な利益の回復」を目指すものです。

相続における不当利得の例

相続における不当利得には以下のようなケースがあります。

・相続人の預金を、生前に無断で引き出して自分のために使用していた
・相続開始後、他の相続人に無断で不動産を売却して売却代金を取得していた
・本来被相続人の所有であった高額な動産を、勝手に取得・使用していた
・遺産分割前に、遺産の一部を処分して得た代金を個人的に使った

このような場合、財産を取得したものは正当な権利にもとづかない限り「不当な利益を受けた」とされ、他の相続人などの関係者から返還請求を受ける可能性があります。

不当利得として返還を求められる利益は?

不当利得として返還を求められる利益は、「現に利益として残っているもの」に限られます。つまり、受け取った金額の全額を常に返還しなければならないわけではありません。

民法704条では「受益者が利益を受けるについて悪意であった(利益を返すべきと知っていた)ときは、その利益をすべて返還しなければならない。」と定められています。

これに対し、善意の受益者(利益を不当に得たことを知らなかった者)は、「現存利益」の範囲での返還義務にとどまります。現存利益とは、受け取った財産が現金として残っている、あるいはそれが購入に使われた不動産や資産が現存している場合などを指します。消費してしまった場合、返還義務が消滅する可能性もあります。

不当利得返還請求権の時効

不当利得返還請求権は、一般的には「被害者が利得の存在を知った時から5年間」、または「利得が発生した時から10年間」で時効が成立します(なお、2020年3月31日以前に生じた不当利得返還請求権に関する時効は、「利得が発生したときから10年間」のみです)。

相続の場合、「いつ利得が発生したか」「いつその事実を知ったか」が争点になることも多く、場合によっては時効の成立が主張されることもあります。このため、事実を知った時点で速やかに専門家に相談することが重要です。

遺産の使い込みに関する不当利得返還請求のやり方

遺産の使い込みに関して不当利得返還を求める場合、以下のような手順で請求していくことが一般的です。

STEP
不当利得の証拠の収集

請求を行う際の事前準備として、まずは不当利得を証明する証拠を集める必要があります。預金通帳の記録やキャッシュカードの利用履歴、不動産の登記簿などを通じて、誰が、いつ、どのような形で財産を取得したかを明らかにしましょう。被相続人の生前に不審な出金があった場合、銀行への照会なども有効です。

STEP
交渉による請求

証拠をそろえた上で、使い込みを行った相続人に対して返還請求を行います。この段階では弁護士を通じた内容証明郵便などを活用することで、請求の正式性と証拠力を確保できます。

STEP
訴訟提起

交渉で解決しない場合、地方裁判所への民事訴訟を提起します。不当利得返還請求訴訟では、原告が「不当な利得の存在」と「自分の損失」を立証する必要があります。

もっとも、実務上では、遺産分割協議や調停の中で、遺産の使い込み等も含めて解決を図られることも多いです。

まとめ

不当利得返還請求は、相続人間の不公平を是正する有力な手段の一つです。特に遺産分割の前後に不審な財産移動があった場合には、他の相続人が適切な対応を取らなければ、自らの相続分が不当に侵害されるおそれがあります。

他方で、不当利得返還請求には「法的根拠の欠如」「現存利益の有無」「時効」といった注意点もあり、判断や手続きには専門知識が求められます。

実際に請求を行う際は、早期に弁護士へ相談し、適切な証拠収集と法的主張をもって対応することが望ましいといえるでしょう。

執筆者東京弁護士法人

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