相続法改正で押さえておくべき5つの改正事項【弁護士が解説】

2019年に、約40年ぶりとなる相続法の改正が行われました。

この法改正は、相続に関わるご家族の生活をより安定させ、相続手続きを円滑に進めることを目的としています。また、遺言制度の利便性向上も大きな柱の一つです。

「一体どんな改正があったのだろうか」「自分が知っておくべき改正はどのようなものがあるのか」、そんな疑問にお応えすべく、本記事では、相続分野を専門とする弁護士が押さえておくべきポイントを解説します。

目次

相続法改正の全体像と施行スケジュール

主な日程は以下の通りです。

  • 2019年1月13日:自筆証書遺言の方式緩和
  • 2019年7月1日:夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置
  • 2019年7月1日:預貯金の払戻し制度の創設
  • 2019年7月1日:遺留分制度の見直し
  • 2019年7月1日:特別の寄与の制度の創設
  • 2020年4月1日:配偶者居住権の創設
  • 2020年7月10日:法務局における自筆証書遺言書保管制度の創設

本記事では、上記の改正を踏まえ、押さえておくべき5つのポイントをご紹介いたします。

①婚姻期間20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置

婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産の贈与や遺贈が行われた場合、原則として、遺産分割において配偶者がより多くの財産を取得できるようになります。

改正前は、被相続人が配偶者に自宅を生前贈与した場合、遺産の先渡しを受けたものとして再分割の対象となり、生前贈与があってもなくても最終取得額に差異が生じませんでした。

改正後は、生前贈与分を遺産の先渡しとして取り扱う必要がなくなったため、贈与された自宅以外の財産を相続人で分けることになり、配偶者の取り分が増え、生活費の面での心配が少なくなります。

②遺留分制度の見直し

「遺留分」とは

定められた範囲の法定相続人に保証されている、一定割合の相続財産のことです。遺言などにより、本来もらえるはずの遺留分が侵害されることがあります。

改正前は、遺留分減殺請求権を行使すると、侵害された相続人が減殺の範囲で相続財産である土地や建物の持分を取得することとなり、不動産が「共有状態」になってしまうという問題が生じていました。

相続財産

今回の改正により「遺留分減殺請求権」が「遺留分侵害額の請求権」に変わり、侵害額に相当する金銭の支払いを請求できるようになりました。

これにより、不動産の複雑な共有状態を回避できるようになり、遺贈や贈与の目的財産となる不動産そのものを受遺者等に与えたいという遺言者の意思も尊重できるようになりました。

③特別の寄与の制度の創設

被相続人の息子の妻など、相続人以外の被相続人の親族が無償で被相続人の看護等を行った場合には、相続人に対して金銭の請求をすることができるようになりました。

改正前の寄与分制度は相続人にのみ認められるものであり、亡き長男の妻が被相続人を看護し貢献していても、寄与分を請求することができず、不公平な事案が発生していました。

改正により、相続人ではない人であっても、被相続人の看護等により貢献をした場合には、相続人に対し貢献に応じた金銭(特別寄与料)を請求できる制度が新設されました。

④配偶者居住権の創設

配偶者居住権の創設により、亡くなった方の配偶者は、終身又は一定期間において無償で自宅に住み続けることができるようになりました。

改正前は、配偶者が居住建物を取得すると評価額が高くなり、その他の財産を受け取れなくなるという事態が発生していました。

改正により、居住権を低い価格で取得できる配偶者居住権が創設されたことで、自宅に住み続けながら、その他の財産も受け取れる可能性が高まりました。

注意:この権利を行使するには、遺言や遺産分割協議で権利を行使する旨を明確にする必要があります。手続きは複雑になり得ますので、弁護士や司法書士などの専門家への相談をおすすめします。

なお、配偶者が配偶者居住権を行使する場合、亡くなった人の子どもは負担付き所有権としての制約を受け入れる必要があります。配偶者居住権を持つ人の承諾がなければ居住建物の売却ができないほか、税金の納付書が負担付き所有権者に届くようになります。

⑤遺言制度の見直し

遺言をより利用しやすくするため、以下の2点の改正が行われました。

遺言制度の改正ポイント
自筆証書遺言の方式緩和(2019年1月13日施行)

改正前は自筆証書遺言の全文を自筆で記す必要がありましたが、改正後は財産目録について、パソコンでの作成や通帳のコピーの添付が認められるようになりました。ただし、本文部分は引き続き自筆が必要で、署名押印も必須です。

法務局における自筆証書遺言書保管制度の創設(2020年7月10日施行)

法務局にて遺言書を安全に保管しながら、遺言者や相続人は必要に応じて原本及び画像データを閲覧することができます。遺言の紛失や偽造といった問題を防ぐことができます。

自筆証書遺言書保管制度を利用する場合の主な流れは以下の通りです。

遺言書を作成する

申請書・添付書面を用意する

遺言者本人が法務局へ出向き申請する

相続開始後、相続人等が原本・画像データを閲覧できる

自筆証書遺言の方式緩和によって作成が手軽になった分、遺言の適切な保管が重要になるといえるでしょう。

弁護士にご依頼いただいた場合

相続は単なる手続きの問題にとどまらず、法的な権利関係の調整や家族間の感情的な対立が生じやすい、極めて繊細な問題です。また、法改正により新設された権利や手続きを正確に行使することは容易とは言えません。

  • 配偶者居住権を設定すべきか否かの判断
  • 相続人間で意見が分かれる場合の遺産分割協議の進め方
  • 遺留分侵害額請求の適切な対応

など、法的な知識と判断を要する場面が多く存在します。

こうした状況においては、早期に弁護士へ相談し、法的に妥当かつ円満な解決を図ることが重要です。専門家の助言を得ることで、将来的なトラブルを未然に防ぐことにもつながります。

最後に

東京弁護士法人には、相続分野に特化した弁護士が多数在籍しております。初回無料相談を行っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせ・ご相談ください。

私たちは、ご相談者様の思いをしっかりと受け止め、最適な解決策を一緒に考えてまいります。

執筆者東京弁護士法人

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