はじめに
ご家族やご親族が亡くなった際、その方の財産や負債を引き継ぐことを「相続」といいます。
そして相続手続きを行う中で重要となってくるのが、「遺言書」という書類です。
一度は耳にしたことのある言葉ではあると思いますが、どうやって作成され、どういった効力を持つのか、本記事で具体的に解説していきます。

遺言書ってなんだろう?
1.遺言書とは
そもそも「遺言」とは、亡くなった方が、「自身が所有する財産のうち、誰に何を残したいか」について生前に意思表示を行うことであり、「遺言書」とは、それを残した書面を指します。
遺言書がない場合は、相続人同士での話し合い、または法定相続分に則って遺産を分けますが、遺言書がある場合は、基本的に遺言書の記載どおりに遺産を分けることになります。
そのため、遺言書があれば、例えば法的に相続人ではない相手に対しても、遺産を残すことが可能です。
2.遺言書の種類
遺言書には、3つの種類があります。
①自筆証書遺言
名前のとおり、自筆で作成された遺言書を指しますが、以下の5つを満たさなければ、法的に無効となってしまいます。
⑴全て本人の自筆であること(※財産目録については代筆やパソコンでの作成も可能ですが、その場合全ページに署名押印が必要となります)
⑵作成日が正確に書いてあること
⑶戸籍上の氏名がフルネームで書かれていること
⑷印鑑が押されていること(※認印でも問題ありません)
⑸訂正・追記箇所がある場合、正しい方法で修正されていること(※3.書き方のポイント内の④にて詳しく記載)
費用もかからず自作できるため取り組みやすい反面、厳しい要件により無効になりやすい、隠蔽・書き換え・そもそも死後遺言書を見つけてもらえない恐れがある、などデメリットもあります。
また、相続発生後は、遺言書の存在や内容を相続人に伝えるため、及び内容が偽造されることなどを防ぐために、裁判所にて検認手続をしなければいけません。
なお、遺言書は法務局にて保管することも可能であり、その場合検認は不要です。
②公正証書遺言
こちらも名前のとおり、公正証書とする遺言書を指します。本人が事前に希望の内容を公証役場に伝え、それを基に公証人が遺言書を作成するのが基本的な流れです。
遺言書作成後は本人が最終確認をし、問題がなければ署名捺印を行うだけであるため、自筆証書遺言と比べて本人の負担は軽いといえます。
また、専門家が作成・保管することにより、安心感や安全性も高く、公証役場での検索サービスにより遺言書の存在も明らかになりやすいです。
ただ、作成には手数料がかかるうえ、最終確認には2名以上の証人の同行が必要となります。なお、未成年者や遺言者の推定相続人等は証人にはなれません。友人や知人など頼める相手がいない場合は公証役場から証人を紹介してもらえますが、その分謝礼がかかってきてしまいます。
③秘密証書遺言
内容は伏せた状態で、遺言書の存在だけを公証役場で証明してもらう遺言書を指します。
作成した遺言書(代筆やパソコンでの作成も可)を封印した状態で公証役場に持っていき、公証人と証人の前で自身の遺言書であると申述し手続を行うことで、確かに本人の遺言書であると客観的に証明してもらうことができます。
ただ、その後の保管は本人が行うため、裁判所での検認は必須です。
自筆証書遺言のデメリットのうち、書き換えの恐れだけ拭える方法といえます。
3.書き方のポイント
遺言書には、「自身が所有する財産のうち、誰に何を残すか」を記載するため、まずは自身が所有している財産を確実に把握する必要があります。
財産目録の作成は必須ではないものの、財産が複数ある場合などは、作成する方がベターです。財産目録は相続税の申告の要否にも活用できるうえ、あらかじめ遺産の内容をまとめておけば、その後の手続もスムーズに行えるでしょう。財産の把握及び財産目録の作成に伴い、まずは各財産を特定できる資料(預金通帳や登記簿など)を集めましょう。
誰に残すのかについては、トラブルを防ぐためにも明確に記載しましょう。「娘に」「息子に」などではなく、しっかりと氏名を記載する方が望ましいです。
上記同様、何を残すのかについても明確に記載しましょう。例えば口座が複数ある場合、「●●に預貯金を相続する」だけではどの口座の預貯金を指しているのか定かではなくなってしまうため、トラブルに繋がる可能性があります。
預貯金なら金融機関名・支店名・口座番号など、土地なら所在地・地番など、確実に特定できる情報を記載するようにしましょう。
自筆証書遺言の場合、修正方法は民法で定められています。詳しい修正方法は以下のとおりです。
⑴訂正箇所を二重線で消し、付近に訂正後の内容を記載(追記の場合は、吹き出し等で追記箇所を明示したうえで追記内容を記載)
⑵二重線の近くに、遺言書に押印したものと同じ印鑑で押印(追記の場合は、追記箇所の近くに押印)
⑶遺言書の最後や修正箇所付近の余白に、どこをどう修正したのか記載したうえで署名(例:●行目 ●字削除●字追加 立川 太郎)
修正方法を誤ってしまうと、修正前の記載が有効になってしまうため、注意が必要です。
遺言執行者には遺言の内容を実現する役割があります。遺言内容をスムーズに実現するために信頼できる相続人や弁護士などの専門家を指定するという選択肢も考えられます。
相続人には、法律で最低限もらえる財産が定められた遺留分という権利があります。すべての財産を特定の相続人等に相続させてしまうと他の相続人の遺留分を侵害することになり、トラブルになりやすいため、ご注意ください。
4.弁護士に依頼をした場合
一見簡単に作成できそうな遺言書ですが、上記のように、実は細かいルールが存在します。法的に有効な遺言書を確実に作成したい場合や、正確な財産目録を作成したい場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。
財産を特定するための資料集め、遺言内容が適しているかの判断など、代理人として全てを担うため、お客様の時間や労力を削る必要もございません。
また、公正証書遺言にする場合は、弁護士が証人として同行することもできます。
5.最後に
遺言書を作成したいものの何から始めればいいかわからずお困りの方や、そもそも自身がどれくらいの財産を持っているのか把握しきれていない方など、一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

