はじめに

遺言書と遺産分割協議書の違いってなんだろう?



遺言書と遺産分割協議書は、ともに相続における重要な書類ですが、目的や役割に違いがあります。遺言書、遺産分割協議書について、作成方法等を含め、それぞれ解説いたします。
遺言書とは
遺言書は、亡くなった方(遺言者)の最終的な意思を記録するもので、相続の分け方や特定の人に財産を遺贈する意思を表明します。遺言書は、相続人が相続を受ける際の基準となり、遺言書に書かれている内容は、相続人に対して法的効力を持ちます。
もし、遺言書に書かれている内容が法令に反していた場合、その部分のみが無効となる可能性が高く、その部分は法律に基づいて相続が行われます。
遺言書の種類
遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があり、それぞれ法的に有効な形式で作成する必要があります。
以下、詳しくご説明いたします。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、最も簡単に作成できる遺言書の形式です。しかし、要件を満たさないと無効になってしまうため、注意が必要です。


遺言書は全て遺言者自身の手で書かなくてはならず、パソコンや他人に代筆してもらうことはできません。また、遺言書を作成した日付を記入する必要があります。この日付が重要となり、日付の記載がない場合や誤った日付が記載されている場合、遺言書が無効になることがあります。加えて、遺言書には、遺言者自身の署名と押印(認印でも可)が必要です。
なお、2020年から自筆証書遺言の一部について、財産目録(相続財産の一覧表)に関してパソコンで作成してもよいという変更がありました。これにより、財産目録は自筆でなくても問題ないですが、遺言書の本体は依然として自筆で作成する必要があります。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人が関与して作成する遺言書で、最も確実で安全な形式です。この方法では、遺言者が公証人に遺言の内容を伝え、公証人がそれを文書にまとめます。
遺言書の内容が決まったら、遺言者は公証役場に行くことになります。公証人は、遺言書を読み上げ、その内容に間違いがないか直接確認します。また、遺言者が精神的に正常な状態でないと公正証書遺言が無効となる可能性があるため、公証人は、遺言者が遺言内容を十分に理解しているかを確認します。その後、遺言者と証人が遺言書に署名・押印します。
公正証書遺言は、公証人が作成するため、法律に則った正しい形式で遺言書が作成されます。これにより、遺言書が無効となるリスクが低くなります。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言書の内容を秘密にしたい場合に利用する方法です。遺言者は遺言内容を自分で書き、それを封印したうえで、公証人にその封印を認証してもらいます。
遺言者は、遺言書の内容を他人に見せることなく、封印して公証人に提出します。
公証人が立会いのもと、封印された遺言書を受け取り、その封印が遺言者のものであることを確認します。遺言書の内容が遺言者の死後まで秘密にされるため、遺言書が公にされることなく作成できます。


遺産分割協議書について
遺産分割協議書は、相続人全員が集まり、遺産の分割方法について合意をするための書類です。
遺産の分割について相続人間で合意が得られたことを証明するために作成されます。相続人全員が合意して署名・押印をした遺産分割協議書には法的効力があり、これに基づいて遺産が実際に分けられます。遺産分割協議書は、特に不動産などの名義変更において必要な場合が多いです。
遺産分割協議書は特定の形式が決まっているわけではありませんが、相続人全員の署名・押印が必要です。また、不動産の名義変更や預金の払戻しなどを行う際には、協議書の内容を証明するために他の書類(戸籍謄本や印鑑登録証明書など)が必要になることもあります。
遺産分割協議書作成の手順は、以下の通りです。
遺産分割協議書の作成手順
遺産分割協議書を作成する前に、まず、相続人全員を確認する必要があります。相続人には、法定相続人(配偶者や子ども、親など)が含まれますが、遺言書がある場合は、その内容に基づいて相続人が異なることもあります。
相続人が特定されていない場合、戸籍謄本などを使って調査し、正確な相続人を確認します。
相続財産をすべて確認し、その評価額を決定します。財産には、不動産、預貯金、株式、生命保険金、借金などが含まれます。
もし、借金などの負債がある場合、それも相続の対象となり、遺産分割協議書に記載しなければなりません。
相続人全員が遺産分割方法について合意しなければなりません。分割方法には、財産を実物で分ける方法や、現金で分ける方法などがあります。
相続人が合意するまで、遺産の評価や分割方法について話し合いを重ねる必要があります。
相続人全員が合意した分割方法に基づいて、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には相続人全員の氏名・住所、遺産の詳細、分割方法、相続人の署名・押印を記載する必要があります。
遺産分割協議書の内容に関して法的な信頼性を高めるために、公証人による認証を受けることも可能です。公証人による認証を受けることで、遺産分割協議書の効力が強化され、相続手続きが円滑に進むことが期待できます。
遺産分割協議書は、相続手続きを進めるための重要な書類なので、保管場所には十分な注意が必要です。遺産分割協議書を紛失、改ざんされることを防ぐため、信頼できる場所に保管することが推奨されます。
まとめ
遺言書は、
- 亡くなった人が決めたもの
- 亡くなった人が生前に一方的に決定した内容を記録したもの
- 相続開始時点で効力が発生する
という書類です。
他方、遺産分割協議書は、
- 相続人全員が決めたもの
- 相続人間で協議して遺産をどのように分けるかを決定・合意したもの
- 合意した時点で効力が発生する
という書類です。
遺言書や遺産分割協議書の作成、作成した遺言書や遺産分割協議書を使って行う相続に関する手続きを行う際には弁護士に依頼することをおすすめいたします。
弁護士に依頼することによって、複雑な相続手続きについても、法的な観点からアドバイスを受けることができます。お1人で抱え込まずに、お気軽に東京弁護士法人にお問合せください。







