はじめに
遺産の使い込みとは、被相続人(亡くなられた方)の財産を管理していた相続人が、被相続人の許可なく預貯金や財産を使用したり、自分のものにしたりしてしまうことを言います。
使い込みの多くは、被相続人が生前に、認知症等の病気や、年を取り判断能力が低下し、財産を自分自身で管理することが困難になった場合に発生いたします。また、家族・親族間だけでなく、介護を行い、財産の管理を任されていた方による使い込みが増えてきておりますので、遺産が発生した際には、注意が必要になってきます。
なお、使い込みは、預貯金や現金だけではなく、被相続人が所有している不動産の売却金の受け取り、被相続人の生命保険の解約返戻金の受け取り、被相続人名義の株式の売却金の受け取りなど様々です。
1つ目のポイント
1つ目のポイントは、話合いです。
使い込みが発覚したら、まずは、使い込みをした相手方に対し使い込みの分を遺産に戻すように話し合いを行います。しかし、使い込みをした相手方が素直に話し合いに応じるケースは少ないのが現状です。仮に相手方が話し合いに応じたとしても、使い込みを行った相手方は①被相続人の医療費・介護費・生活費に使った②被相続人から贈与されたもの③使い込みという認識がなかったなどと反論することが多いです。
実際に、使い込みを証明するには、使い込みの証拠を集めて証明することが困難なため、実際には、使い込まれた遺産を取り戻すのは容易ではありません。
証拠となる書類としては、主に以下の資料等が挙げられます。
①被相続人の預貯金の取引履歴
不自然な引き出しがないか確認できます。
②使い込んだと思われる方の通帳
被相続人の預貯金の取引履歴と照らし合わせて、入出金が一致していれば使い込みを証明できます。
③被相続人の医療記録、カルテ、介護記録など
被相続人の健康・精神状態を確認し、自ら預貯金を引き出せる状況ではなかったことを証明できます。
④医療費や介護費用、葬儀費用の領収証
被相続人の預貯金の取引履歴と照らし合わせて、引き出した金額より少ない場合は、使い込みの可能性があります。
2つ目のポイント
2つ目は、特別受益として対応することです。
使い込みを行った相続人が「被相続人から貰った」と主張した場合は、使い込みが特別受益(被相続人から特定の相続人のみ生前贈与、遺贈(遺言により財産をもらうこと)、死因贈与された利益)に該当すれば、贈与されたとする金額を遺産に戻した上で、遺産分割の計算を行うことができます。
3つ目のポイント
3つ目は、不当利得返還請求及び損害賠償請求をするです。
例えば、相続開始前に被相続人の許可なく被相続人名義の口座から預金を引き出した預金については、返還するように請求(不当利得返還請求または不法行為に基づく損害賠償請求)する事ができます。使い込みを行った相手方に返還を求めることが可能です。
ただし、この請求には、時効があります。不当利得に関しては、使い込みがあってから10年以内、相続開始から5年以内となり、損害賠償請求に関しては、「使い込みが発覚した時から3年」となりますので、注意してください。なお、不当利得返還請求権が行使できるのは、法定相続分となりますので、こちらもご注意ください。
4つ目のポイント
最後のポイントは、刑事告訴です。

遺産の使い込みをしたら横領罪や窃盗罪にあたるのかと思う方もいらっしゃるかと思います。被相続人との関係が配偶者や直系血族、及び同居している親族の場合は、刑は免除されます。(刑法244条1項、255条)
ただ、使い込みを行ったのが、上記以外の方の場合は、横領や窃盗にあたり、刑法第244条第2項につき、告訴する事により、刑事事件として捜査をすることができます。
最後に
遺産が使い込まれた場合、まずは、当事者同士の話合いが大事になってきます。当事者同士の話合いで解決できれば一番良いのですが、使い込んだと認めてもらうためにはなかなか難しいかもしれません。また、話合いがうまくいかなかった場合は、裁判を起こす必要が出てきます。相続人の方だけでの対応では、限界もあり、労力もかかってきてしまいます。
そういった場合には、弁護士に依頼すると、相手方とのやり取りは全て弁護士が行うため、仲が悪い親族同士であっても直接話す必要はなく、相手の主張に惑わされずに交渉が可能となります。
また、遺産に関する金融機関などの資料の収集を代理で行うことが可能です。さらに、使い込みを行った相続人が金融機関の情報開示を拒否されたとしても、弁護士会照会という制度を利用して情報を開示していくことが可能となります。
ご自身で抱え込まずに、使い込みが疑われる場合や発覚した場合は、弁護士にまずは相談することをおすすめいたします。

