葬儀費用や法要費用は誰が負担すべき?【弁護士が解説】

葬儀費用や法要費用は誰が負担すべき?

ご相談にお越しいただいた方などから、このような質問をよくいただきます。

この点については、以下にて解説させていただければと思います。

目次

葬儀費用・法要費用はどんな費用か

 遺産分割において問題となる葬儀費用・法要費用とは、亡くなった方を追悼するための葬式費用に加え、火葬や埋葬費用、遺体や遺骨の運用費用など納骨をするためにかかった費用などを意味すると考えられております。

 通夜や告別式における飲食代や、初七日や四十九日の費用については、葬儀との一体性等が考慮され、個別具体的に、遺産分割において問題となる葬儀費用・法要費用に含まれるか否かが判断されることが多いです。

 他方、一周忌や三回忌の費用、墓地や墓石、仏壇の取得費用は、一般的に、遺産分割において問題となる葬儀費用・法要費用には含まれないと考えられています。

葬儀費用を誰が負担すべきかに関する考え方

 相続人間で紛争が生じている場合には、葬儀費用・法要費用を最終的に誰が負担すべきかについても揉めてしまうことが多いところ、葬儀費用・法要費用は、相続が発生した後に発生した費用であり、亡くなった人が負う債務ではありません。

 そのため、原則として、葬儀費用・法要費用は、遺産分割の審理の対象とはなりませんが、相続人全員が葬儀費用・法要費用を審理の対象とすることに合意するのであれば、葬儀費用・法要費用を誰が負担するかについても話し合うことが可能です。

 この点、裁判実務においては、葬儀費用・法要費用を誰が負担するかについて、明確な考え方が定まっているわけではなく、以下の通り、複数の考え方が示されています。

①喪主負担説

喪主が祭祀承継者として葬儀を執り行うのだから、費用も喪主が負担すべきであるとする考え方。

②相続人負担説

相続人が相続分に従って共同で負担すべきであるとする考え方。

③相続財産負担説

相続財産から負担すべきであるとする考え方。

④慣習条理説

それぞれの地域の慣習に従って負担するべきであるとする考え方。

 以上の通り、いずれの考え方もあり得るかと思われますが、裁判実務においては、①喪主負担説が主流であるとされています。

ただ、葬儀費用・法要費用が常識的な費用である場合にも、喪主一人が葬儀費用・法要費用を全額負担することになるのは妥当ではないといった点などを踏まえ、実際には、②相続人負担説③相続財産負担説を前提とした話し合いがなされることも多いです。

遺産からの支出はNGか

遺産から葬儀費用や法要費用を支出することはNG?

 葬儀費用・法要費用を誰が負担するかにつき相続人間で争いがあり、相続人全員が葬儀費用・法要費用を遺産分割の審理の対象とすることに合意していない場合には、遺産分割協議はもちろんのこと、原則として、遺産分割調停・審判においても、葬儀費用・法要費用を誰が負担すべきかを審理の対象とすることができないため、別の訴訟手続(不当利得返還請求等)に拠ることになります。

 そして、相続人の一人が遺産から葬儀費用・法要費用を払い戻したとして、他の相続人が各自の法定相続分額を返還すべきと訴訟を提起した場合、従前の相続人間におけるやりとりや葬儀費用・法要費用の金額等、個別具体的な事情が考慮され、上記①~④に沿った判断が下される可能性が高いところ、①喪主負担説を前提とした判断が下された場合には、葬儀費用・法要費用を遺産から払い戻した相続人が、他の相続人に対し、各自の法定相続分額に応じた金額を返還することになります。

 そのため、そもそも相続後に亡くなった方の預貯金から葬儀費用・法要費用を引き出すことが当然に許されるわけではありませんが、上記②や③の考え方を前提に遺産から葬儀費用・法要費用を払い戻すとしても、他の相続人から異論が出るほどに、葬儀費用・法要費用の金額が多額にならないよう注意する必要がある上、後の紛争に備え、葬儀費用・法要費用を示す領収書等の資料をしっかりと残しておくことが大事になります。

まずは弁護士へ相談を

 葬儀費用・法要費用を誰が負担するかについて、他の相続人と揉めてしまうことは少なくありません。この点について、裁判実務においても確立した基準があるわけではなく、個別具体的な事情を考慮した話し合いが必要となります。

 ただ、相続人間で葬儀費用・法要費用を誰が負担するかについて、次第に揉めてしまい収拾がつかなくなってしまうこともありますので、お悩みの方はまずは当弁護士法人まで一度ご相談をいただければと思います。

目次