特別受益とは?特別受益について知っておくべき5つの知識

目次

はじめに

遺産分割をするにあたり、特別受益という言葉をご存知でしょうか。初めて耳にする方もいらっしゃると思います。特別受益とはどんなものなのか、特別受益について知っておくべき5つの知識をご紹介いたします。

特別受益ってなんだろう?

特別受益とは

特別受益とは、被相続人(亡くなられた方)から特定の相続人のみ個別に財産を贈られることや、遺贈されること(遺言により財産をもらうこと)を言います。このような贈与の利益を考慮せずに、相続開始の際に実際に残された財産だけで相続分を定めてしまっては他の相続人は不公平だと感じてしまいます。そこで、上記のような贈与の利益は、相続開始の際に実際に残されていた相続財産の額と合算した上で、各相続人の相続分を決めることになっています。特別受益とは、いわば、相続人全員が納得して公平に遺産分割するためにある制度です。

どんなものが特別受益にあたるのか

具体的には、特別受益にあたるかどうかを詳細に規定している法律がないため、裁判所によって判断されることとなりますが、民法903条1項より、大きく下記の4つが特別受益にあたるとされています。

  • 遺贈(遺言による贈与)
  • 婚姻のための贈与(結婚する際に受け取る支度金や、家具購入費用など)
  • 養子縁組のための贈与(普通養子縁組をするにあたり、実親が子に対して持参金を持たせていた場合)
  • 生計の資本としての贈与(開業資金や住宅購入資金、田や畑などの贈与)

なお、生前に得た利益すべてが特別受益に該当するとは限りません。食費や学費、医療費、少額のお小遣いなど、扶養義務の範囲内と認められる場合は「生計の資本としての贈与」に該当しません。、あくまで、親族間での扶養義務を超えて行われた金銭援助が特別受益となります。

特別受益がある場合の遺産分割の計算方法

例えば、父親が亡くなり、相続人が子(姉と妹)の2人だった場合、亡くなった父親から生前に、姉が家を建てる際に建築資金1000万円をもらっていた場合は、特別受益にあたります。相続発生時の遺産が6000万円だった場合、そのまま半分ずつ分割するのではなく、相続人が公平に遺産分割を行うために、生前に姉が贈与された1000万円を資産に戻してから遺産分割を行います。これを特別受益の持戻しと言います。

特別受益を考慮しない場合

姉と妹の相続分は2分の1ずつになるため、それぞれ3000万円ずつ相続することになる。

特別受益を考慮する場合

まず、相続発生時の財産6000万円に、特別受益の1000万円を持ち戻した上で相続分を計算すると姉と妹の相続分は3500万円ずつとなる。そして、姉の特別受益1000万円を控除すると姉の相続分は2500万円、妹の相続分は3500万円となる。

ただし、被相続人(父)が、生前贈与はするけど、「自分が亡くなったときに特別受益として持ち戻さなくてよい」という意思表示(口頭でも可)を行っている場合は、特別受益として持ち戻さなくてもよいということとなります(民法903条3項)。これを「持ち戻しの免除」といいます。しかし、遺留分を侵害する生前贈与については、持ち戻しの免除は無効となります。

特別受益の時効

特別受益に時効はありません。そのため、被相続人が亡くなる10年以上前に行われた贈与であっても、特別受益となる可能性はあります。

もっとも、これまで、特別受益に関しては、期間制限は設けられておりませんでしたが、令和元年7月1日の相続法改正により、遺留分を算定する際は、相続開始前10年間に贈与したものに限定されることとなりました(令和元年7月1日よりも前に発生した相続に関しては適用されません)。 ただし、10年以上前になされた贈与であっても贈与の当事者である被相続人と相続人とが、遺留分を有する他の相続人に損害を加えることを知りながら贈与した場合には、特別受益に該当する可能性があります。

特別受益を証明するには

遺産分割協議や調停で相手方が特別受益を認めてくれれば証拠は必要ありませんが、利益を得ている相続人が特別受益について認めない場合は、裁判所に特別受益があったと認めてもらうために証拠が必要となってきます。特別受益を証明できる証拠としては、預貯金口座の通帳・取引明細などの贈与額を示せる履歴や、契約書、不動産の全部事項、不動産の固定資産評価証明書・査定書、被相続人が書いた日記や、メモ、特別受益を受けた人とのメール・手紙のやりとりなどが贈与の内容を示す資料となります。

最後に

特別受益は、利益を得た相手方が認めない限り、証拠を取得することが重要となってきます。特別受益を認めさせるためには、調停や審判などで裁判所に判断してもらうため、紛争が起こりそうな場合は、早めに弁護士に相談し、特別受益にあたるのか、証拠の収集などを行い、遺産分割を行うことをおすすめいたします。

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