支払うべき遺留分を不動産鑑定を用いて数千万円減額した事例

目次

ご依頼前の状況

  • ご依頼内容
    遺留分侵害額請求訴訟
  • 遺産の内容
    預金と数十個の不動産
  • 遺言の有無
    ご依頼者様に遺産の全てを取得させる遺言あり
  • 主な争点
    不動産の価値、遺留分の金額
離婚_男性

ご依頼者様に遺産の全てを取得させる遺言があったため、他の相続人より遺留分(法律で認められる相続人の最低取得分)を請求されている状況でした。

当法人としては、不動産の数が多く、双方の主張する遺留分の額に大きな開きが生じ得る事案であったため、裁判での解決になる可能性が高いと考え、依頼を受けました。

ご依頼の結果

ご依頼をいただいた後、こちらが支払うべき遺留分の金額について双方で主張しあいましたが、双方の主張する遺留分額に3000万円ほどの開きがあったため、当初の想定どおり、やはり話し合いでの解決は難しい状況でした。

そこで、裁判で解決を図ることになりましたが、裁判では多数の不動産について不動産鑑定士による鑑定を行い、適正な不動産の価値を決定したうえ、それをもとに相手方の請求額から2500万円前後減額する形で解決に至りました。

解決のポイント

遺産に不動産が含まれていると、不動産の価値が決まらなければ支払うべき遺留分の額が決まらないことになるため、紛争を解決するうえで不動産の価値をいくらと考えるかが重要になります。

ただ、今回の事案のように遺産に不動産が多数含まれているようなケースでは、遺留分を請求する側は不動産の価値をできるだけ高く主張し、遺留分を請求される側は不動産の価値をできるだけ低く主張するため、双方の主張に大きな乖離が生じることが通常です。

その場合、話し合いでの解決は困難となり、裁判で解決を図ることになりますが、仮に裁判になったとしても裁判官は不動産の専門家ではないため、裁判官として適正な不動産の価値を積極的に示すことはありません。

そうすると、最終的には、裁判所として、不動産鑑定士に依頼をして不動産鑑定を行ったうえ不動産の価値を決定して事件を解決することがあります。

早々に裁判手続に持ち込んだこと

今回のご依頼では、遺産に数十個の不動産が含まれており、遺留分を請求する側は考え得る最大の額を主張してくることが一般的ですので、交渉の段階で双方の主張に数千万円の開きが生じることは当初より予想していました。

そして、交渉の段階では、誰かにどちらの主張が正しいかジャッジしてもらえるわけでもないため、双方が自身の主張に固執し、膠着状態になることが多いです。

これを打破するには、双方の主張額の中間値による解決を求めるなど、ざっくりとした解決案を提案していくことがあり得ますが、今回のご依頼の場合、このような解決は1000万円以上の譲歩が必要となってくるため、早期解決を考慮しても、そのような進め方は望ましくありませんでした。

そこで、当法人としては、交渉を続けても膠着状態が続くだけで妥当な解決に至ることはできないと判断し、初期段階で交渉を打ち切り、裁判手続に移行させることを提案しました。

結果として、この判断により数ヶ月から1年程度の期間を短縮することができたと思います。

不動産鑑定に踏み切るべきと判断したこと

裁判で不動産の価値が争いになった場合、裁判所に対し、不動産鑑定を求めていくべきか否かは弁護士として非常に難しい判断になります。

裁判にて不動産鑑定を実施することになった場合は、不動産鑑定士の先生が鑑定を行っている期間の分、裁判が長引くことになりますし、不動産鑑定の結果がこちらに不利なものであっても受け入れなければならなくなります。

そのため、弁護士としては、様々な事情を考慮したうえで不動産鑑定を求めていくべきかを判断することになりますが、今回のご依頼では、絶対とはいえないものの、事前の調査などから不動産鑑定を行えばこちらの主張額に近い結果になるのではないかという見込みが立てられたため、裁判所に対し不動産鑑定の実施を積極的に求めていくことにしました。

結果として、不動産鑑定は実施され、最終的にほぼこちらの主張と相違ない金額で解決することができ、相手方の請求額から2500万円ほど減額することに成功しました。

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