後遺障害の認定を受けることで得られる賠償金
交通事故で後遺症が残ったとしても、後遺障害の認定を受けなければ後遺症に関する賠償金は得られません。
それでは、後遺障害の認定を受けた場合、どのような賠償金を得ることができるのでしょうか。
まずは、以下の表をご覧ください。
治療中(症状固定前) |
症状固定 |
症状固定後 |
|
得られる主な賠償金 | ①治療関連費
②休業損害 ③入通院慰謝料 |
①後遺症逸失利益
②後遺症慰謝料 |
交通事故で怪我をしてしまい治療をすることになった場合に得られる賠償金が上の表の「治療中(症状固定前)」という欄に記載のあるものです(人身事故で通常得られる賠償金です)。
そして、怪我の治療を行い、その後、怪我が完治した場合には、怪我が完治するまでの①治療関連費や②休業損害、③入通院慰謝料を賠償金として得られることになります。
しかし、怪我の治療を行っても怪我が完治せず、治療を続けても症状の改善が見込めない状態になってしまうことがあります。
そのような状態を「症状固定」といいます。
症状固定になると治療を続けてもあまり意味がありませんので、基本的に治療は終了となり、残ってしまった症状(後遺症)について後遺障害の認定を受けることを目指すことになります。
そして、後遺障害の認定を受けられた場合に得られる賠償金が上の表の「症状固定後」という欄に記載のある①後遺症逸失利益、②後遺症慰謝料です。
この2つが後遺障害における主な賠償金となります。
後遺症逸失利益って何?
残ってしまった後遺症の影響で仕事のスピードが遅くなってしまったり、仕事を休まなければならなくなることがあり得ます。
このような場合、将来にわたって収入が減少してしまうことになりかねません。
このように、交通事故被害者の方が将来得られたはずであるのに後遺症によって得られなくなった利益のことを後遺症逸失利益といい、後遺症が残ってしまった被害者の方は後遺症逸失利益分の金額を賠償金として得ることができます。
後遺症逸失利益の計算方法は、以下のとおりです。
基礎収入×労働能力喪失率×中間利息控除率(ライプニッツ係数)
上に記載のとおり、基礎収入と労働能力喪失率と中間利息控除率(ライプニッツ係数)を掛け合わせることで後遺症逸失利益は計算できます。
基礎収入は、基本的に、交通事故に遭う前の収入をもとに決めることになります。
労働能力喪失率とは、後遺症によって失われた労働能力を割合(%)で示したものです。
後遺障害の等級ごとに○%として設定されており、例えば、6級であれば67%、14級であれば5%となっています(6級であれば67%の労働能力が失われた、14級であれば5%の労働能力が失われたと考えるということです)。
中間利息控除率は、少し難しい概念ですが、将来得られるはずであった利益をすぐに一括で貰えることになるため、公平の観点から「すぐに一括で貰える」ことの利益を差し引くというものです。
お金をすぐに一括で貰えることで、そのお金を運用して増やすこともできますし、銀行に預けておくだけでも利息が得られます。
このような利益分がどの程度であり、どの程度を差し引くと公平になるかということを示しているのが、中間利息控除率(ライプニッツ係数)というものです。
後遺症逸失利益の計算は難しいので、詳しくは弁護士に相談することをお勧めします。
後遺症慰謝料って何?
後遺症慰謝料とは、後遺症が残ってしまったことによる精神的苦痛に対する慰謝料のことをいいます。
後遺症慰謝料は、後遺障害の等級ごとに目安の金額が決まっており、交通事故被害者の方は、認定された後遺障害の等級に対応する金額を賠償金として得られることになります。
等級ごとの後遺症慰謝料額の目安については、以下のとおりです。
等級 | 後遺症慰謝料額(裁判所基準) |
---|---|
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
賠償金計算における3つの基準
「賠償金計算基準の真実」というページで説明をしたことは、後遺障害の賠償金についても当てはまります。
つまり、加害者側保険会社は、被害者の方と示談交渉をする際、賠償金の提示を行いますが、保険会社独自の計算基準である「任意保険基準」を用いて賠償金額を計算し提示します。
しかし、任意保険基準によって賠償金を計算した場合、裁判所で認められている適正な計算基準である「裁判所基準」で計算した賠償金額の5~7割程度であることがよくあります。
それにもかかわらず、被害者の方が、保険会社の用いている計算基準が正しいものであると信じて保険会社の提示を鵜呑みにしてしまっているケースが多々あります。
この点、弁護士が示談交渉を行うことになれば、「任意保険基準」は各保険会社が独自に作成した基準にすぎませんので、裁判所で認められている適正な計算基準である「裁判所基準」をもとに交渉を進めていくことになります。
そのため、弁護士が示談交渉を行えば、得られる賠償額は、結果的に「裁判所基準」に近い金額となり、「任意保険基準」で計算した金額より高額な金額になるわけです。
特に後遺障害の認定を獲得できたような場合には、症状固定前の賠償金に加えて症状固定後の後遺障害に関する賠償金も得られることになるため、賠償基準の計算基準が異なることで、賠償金の額が数百万円から数千万円も変わってくることがあります。
適正な後遺障害に関する賠償金の額を把握するためにも、まずは弁護士に相談をされることをお勧めします。